相続税申告を税理士に依頼する場合は、相続税申告の実績や知識に富んだ税理士を選ぶことが最も重要であるといえます。
なぜなら、相続税は財産の種類や状態に応じた評価方法、一定の要件を満たすと相続税額を減らすことのできる制度など、おさえるべきポイントが複雑かつ多岐に渡るなか、税理士によって知識もノウハウも異なるため、結果的に算出される相続税額に大きな差が生じてしまう可能性があるからです。
税理士によって得意分野が異なります

たとえば一言で医者といっても、内科や外科、小児科、皮膚科のようにさまざまな専門分野があり、それぞれに専門医がいます。同じように税理士も、資産税(相続税を含む)、法人税のように得意とする分野が異なるのが一般的です。
会社の会計業務を主に扱う税理士の場合、法人税については得意とするものの、相続税については知識も経験も浅い、あるいは経験したことすらないというケースも決して珍しくありません。
特に相続税は知識や経験による差が開きやすい分野であるともいわれており、これを相続税申告に慣れていない税理士が担当してしまうと、結果的に相続財産の評価額を抑えることのできる特例や控除などを見落としてしまい、相続税額が高くつく、あるいは少なすぎる、という事態にもなりかねません。
相続税申告を適切にスムーズに完了させるためにも、相続税の知識と実績を備えた税理士事務所を選ぶようにしましょう。
相続税額の計算結果が異なるのはなぜ?

そもそもなぜ、納めるべき相続税額が異なるという事態が起こりうるのでしょうか?
簡単に言うと、相続税は税額を自分で計算しなくてはならないというルールになっているからです。
たとえば「固定資産税」や「住民税」のような地方税は「賦課課税制度」が採用されており、地方公共団体等が税額を算出し、納税者に通知します。納税者自身が税額を計算する必要がなく、当然ながら税金を払い過ぎてしまう心配もありません。
一方、相続税はこれと異なり「申告納税制度」が採用されており、納税者は自ら税額を計算し、税務署に対して申告と納税を行わなければなりません。
もし支払うべき税額よりも高い金額を納付したとしても、税務署が自動的に払い過ぎた分を還付する仕組みにはなっておらず、払い過ぎに気づけないまま終わってしまうのです。しかし逆に、低い金額での申告には厳しく、税務署の調査が入り、申告漏れとして追加徴税が求められることがあります。
重要度も難易度も高いのは「土地評価」
特に、相続税の計算において最も難易度が高く、かつ相続税額を大きく左右するのが「土地の評価」です。土地評価は、土地の種類、形状、利用方法などに応じたさまざまな減額の計算の難易度が高く、税理士10人が計算すると10通りの結果になるともいわれるほどです。
土地はひとつとして同じものはなく、土地評価の際はその土地のある場所のほか、それぞれに個別の事情(傾斜地、旗竿地、私道、高圧電線が通っているなど)に応じて、これらの事情を事細かく考慮する必要があります。
国税庁が発表する「財産評価基本通達」に基づき土地評価しますが、この通達の量は非常に膨大です。また、この通達をもとに評価するのはたいへん気の遠くなるような大変な作業で、日ごろ税に触れている税理士であっても困難を極めるのであれば、一般の方が行うのは到底難しいということがお分かりいただけるのではないでしょう。
高額である不動産の評価は、相続税を適切に節税する際の重要なポイントとなります。不動産の評価額を抑えることは、相続税の課税対象となる財産額を減らすことに繋がり、ひいては相続税の支払い額を減額できるということです。
相続税申告を、ノウハウが豊富な相続税専門の税理士が担当するか、相続税申告の経験に乏しい税理士が担当するかでは、納めるべき相続税額に大きな差が生まれうることをお伝えいたしました。相続税額を適切に抑え、大切な方が残してくれた資産を少しでも多く手元に残しておくためにも、相続税申告は相続税に強い税理士に相談、依頼すること強くおすすめいたします。